博士号論文『580年間に作られた脳』 -第2章-

第2章  展開編         【No11,32】
          人間の寿命は660歳
第1部
        580年間に作り出された体質
                   【2表-1ト-ラス】
  A:問題提起1   妊娠10ヶ月
 蝉は幼虫として地中に7年間近くおり、成虫になって約1週間しか地上で生きていないと言われている。私達は、一定に動く時計を用いて、しかもこの世に出てからという一側面においてそれを見ているため、これら生物の哀れさを感ずるわけだ。
この蝉の例は、一定時間で、しかも一側面の空間で蝉の寿命を把握して良いのかという疑問を投げかけている。即ち、非生命体の物質である飛行機や新幹線には適しているであろう一定の時間で、一定に成長していない生命体(妊娠中の胎児の成長)を捕えることが妥当か。生命体である人間の寿命を今のように一定な時間で、しかも空間の一側面である地上だけで測った、今日の寿命の計算方法に疑問を感じる。

  B:時間の概念
          機械論的時間と内部生命的時間
 まず初めに、時間の概念を大きく二つに分けて、機械論的時間と内部生命的時間で表すことにする。
 機械論的時間とは、今日多く世界中で用いられている時間を意味する。即ち、この時間は、非生命の宇宙が作り出す一定のリズムを時計の針に変換したものに過ぎない。だから、時計の針はほぼ一定速度で機械的に動き、生命体の心の動きや肉体の変化などには無関係に動き続けるものである。
 一方、内部生命時間とは、心理・生理的時間とを内包した時間である。ここで使うこの心理的時間とは、悲しい時に無常に刻むあの一定の機械論的時間が長く感じられるような主観的時間であり、嬉しい時には機械論的時間が一瞬に過ぎ去ってしまうかのように感じられる一定でない時間である。また、生理的時間とは、老人と子供では負傷した時の傷口の回復力が違うように、各細胞が持つ一定でない復元力等によって決定されうるであろう時間のことである。


  C:空間の概念     ト-ラスの世界
 次に空間の概念を見直してみる。
 蝉についてもう少し述べ、空間を捕らえてみよう。それにはト-ラス【2表-1ト-ラス】を考えてみる。今、図中のAは蝉が生活していた地下の世界とし、Bは地上の世界を示していると考える。このA・B両世界は別個に対立した世界ではなく、ト-ラスという世界の一つの断面である。一つの世界から固定的に考えると、地下の世界(A)と地上の世界(B)は対立して共有点を見い出せない。しかし、三次元空間の中を移動して考えると、(A)と(B)の両世界はト-ラスという世界で統一されている。だから、蝉を地上のBの世界だけで考えると、蝉の一生が約1週間となって哀れだと考えてしまう。これを統一体のト-ラスの世界で考えれば、蝉という生命体は地下のAの世界で十分楽しんだ後に、地上の世界へ他界したものとも考えられる。また仮にA´を現世、B´を死後の世界とすれば、現世と死後の世界はト-ラスという世界で統一された世界の、一側面になるわけだ。だから極論を述べれば蝉にとっては地下の世界が現世の世界で、地上の世界が死後の世界とも考えられる。このように、空間も単なる一側面だけで考えていてはならない。


  D:問題提起2
 今日の人間の年齢は、空間の一側面である地上の世界で、しかも前述した機械論的時間(通常の時間)によって平均80歳といわれる。しかし、機械論的時間で同じ年齢であっても、心理・生理的時間から見て若く見える人がいるのはなぜか。人間は、この地上世界に生まれる前の約10ヶ月間(機械論的時間)に、一個の受精卵が母親の体内という一側面(A)の世界で約30数億倍の大きさになり、そこから体外という別の側面の地上世界(B)に出て来たもので、80歳(機械論的時間)近く生命を地上の社会の中で燃やしている生物なのだ。だから、空間のト-ラスという統一体で、しかも機械論的時間で考えると、人間の寿命は「体内の年齢と体外の年齢の和」ということになり、0.8歳+80歳=80.8歳ということになる。特に、機械論的時間の10ヶ月間 (10÷12≒0.8歳)は、人間の受精卵がある程度の外部環境の力と食物によっ て作られる内部環境(体液と細胞とホルモン)から生じる力によって、影響を受けている期間と考えられる。


 しかし、良く知られているように、人間の平均寿命は地上の世界(B)で、しかも物理的時間によって80歳と言われている。80.8歳とは言わない。ましてや、人間の平均寿命を空間のト-ラスという統一体(A・B両世界)で、しかも機械論的時間ではない内部生命的時間によって決めたら、80.8歳という平均寿命はどのような数値になるのか。

  E:問題提起3
 今、地上の世界(B)に出た3kgの赤子が80年間〔機械論的時間〕で、体重が60kgの成人になったとする。即ち、80年間〔機械論的時間〕で、質量が20倍になったわけだ。例の地下の世界(A)=母親の体内で、しかも0.8年間〔機械論的時間〕で受精卵が30数億倍になって赤子になるのとは雲泥の差である。この点に注目して、次のような物差しで「内部生命的時間」を定義し、人間の寿命を捕らえ直してみよう。そして、食生活が子供の体質に重大な影響を与えていることを、数学の指数・対数論で考えてみたい。

  F:寿命の計算論法
 祖先からの遺伝子を持った精子と卵子が受精卵を作った時点を仮に出発点とする。一個の受精卵が活発に細胞分裂を起こし、徐々に全体の質量を増加させていくが、細胞分裂の個数が二倍になるのに費やした時間を仮に内部生命的時間の一歳年と定義する。ここで赤子は地上の80年間で約20倍の質量になった後、老人になるわけだ。勿論、実際は成人の段階で質量的増加はほとんどない。しかも、赤子から老人までの伸び率を便宜上一定(母体内ほど急激な細胞分裂による質量の変化がないため)とする。次の計算(2表-3)によれば、赤子から老人になる80年間〔機械論的時間〕は、内部生命的時間で捕えると4.3歳年に相当する。すなわち、4.3乗すると約20倍の質量の変化がある訳だ。一方、受精卵が体内の10ヶ月間(機械論的時間)で30数億倍になって、赤子として地上の世界(B)に出て来る。この期間も同じように計算(2表-3)すれば、この10ヶ月間は内部生命的時間の31歳年に相当する。


 次に、赤子から老人になる内部生命的時間の4.3歳年が、機械論的時間の80歳に相当するから、受精卵が赤子になる内部生命的時間の31歳年は機械論的時間に換算し直すと580歳に相当する。即ち、機械論的時間による母体内の0.8年間(10ヶ月間)は、内部生命的時間に換算すると580歳に相当することになる。
 となると、人間の寿命は、内部生命的時間で換算し直し、しかも前述の地下の世界と地上の世界との和で考えてみると、「580歳に80歳を加えた和。660歳」となる。一側面だけで捕らえていた通常80歳と言われている人間の平均寿命は、ト-ラスの統一体の中で、しかも物理的時間を内部生命的時間で換算し、しかももう一度物理的時間に再換算し直すと、660歳となるわけだ。
 以上のように、「物差し」をどこから、どのような基準で目盛るかによって大きく物の見方・考え方は変化してしまう。こうして考えて見ると、あの580年間は、受精卵が母親の体内で食物の変形体であるもの(体液と細胞とホルモン)から生じる力によって、影響を受けている時で、基本的な体質が形成される時期なのである。






 第2部
          体質として、諦める必要はない

 前述の580年間を強調することは、胎児教育への偏りとなり、高校・大学での教育を否定するものと言われるかもしれない。しかし、多くの教育者が指摘するように中学・高校の時期において、すでに生徒間の学力差が認められているし、幼稚園・小学校においても同じようなことが言われている。それ故に、低学年における教育が重要であることは、多くの人が認められるものであろう。
 子供に個人差・能力差が存在していることを認めた上で、どのように教育するかを考えるべきで、それを認めずに子供の能力がすべて平等であると考えるのは問題である。勿論、教育を受ける機会の平等を否定するわけではない。また、高学年での教育は低学年のそれとは本質的に違うものだ。
 以上のように個人に能力差があって、しかも低学年と高学年における教育の役割が存在していると考えているから、能力差の一部は、遺伝や580年間による体質として諦めなくてはならないものも一部にはあるかもしれないが、他の個所においては健康管理や教育が届くものである。即ち、外部環境の整備と訓練のほかに、内部生命力を重要視すれば、子供達の不健康になりつつある体と頭脳の生まれ持った体質は、変えられるものである。それ故に、体質の一部は、内部環境や内部生命力に影響を与えているであろう四大要素(食生活・教育・運動・精神的活動)によって、改善されうるものなのである。 実際、580年間に作り出された細胞は、一瞬たりとて、固定・静止しているものではない。常にそれはダイナミックに流動的に変化している。それ故に、内部生命力の現れであろう粗暴化現象や神経細胞の衰えによる能力低下、そして一般学生の中にも広がっている肩こり・頭痛・アレルギ-性鼻炎・骨折等、体全体の症状をも体質として諦めてはならないと考えている。
  このような時間の捕らえ方により、今日の健康・教育問題を根本から見直す必要がある。




               まとめ

    「人間の寿命は、660歳」

         【空間と時間を考える】

 A:空間……ト-ラスの三次元空間 (ド-ナツ型)
          例  蝉(7年と7日)
             結論 80+0.8=80.8歳
 B:時間
        内部生命的時間
          例  悲しいとき時間は長く 嬉しいとき時間は短く感じられる
             結論   内部生命的時間は生命体(人間)に適している
        機械論的時間
          例  宇宙の一定リズムを刻んだのが、現在使われている時計
             結論   機械論的時間は物質(飛行機・車)に適している
 C:機械論的時間から内部生命的時間
             結論 0.8歳は580歳
 D:空間と内部生命的時間
             結論 80歳+580歳=660歳



  結  論
 【ものの捕らえ方によって、人間の平均寿命は、660歳であるとも言える。特に、580歳の時期に体質の基礎が作られる。】
 【しかし、諦めることはない。体質は改善できる。留まり、固定するものはないからだ。体質についてもう一度見直すことができる。 】